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10年後には黒歴史

感想:Erewhon(CLOCKUP)

 CLOCKUPから先週の金曜日(7/27)に発売された『Erewhon』をプレイしたので感想を書きます。物語の真相に深く関わる内容は背景と同色にしてドラッグしないと見られないようにしましたが、基本的に少しのネタバレに注意するつもりはないので未プレイの方などはご注意ください。
 公式HPにはジャンルが「因習の村でマレビトとして奉仕されるADV」と表現されており、まさにジャンルの表題通りの酒池肉林を楽しむゲームでした。今回全ての脚本を担当されたのが『euphoria』や『夏ノ鎖』、『サクラノ詩』の真琴ルートなどの脚本で有名な(※私が知っている所を並べただけではあります)浅生詠さんです。浅生詠さんが脚本を書かれた*1作品は、いずれも人間の心理の負の部分が極めて強烈に、かつ自然に表現されており、『Erewhon』でも規則やしきたりの厳しい田舎特有のドロドロした人間関係や因習を表現しきってくれるものと期待していました。また、浅生詠さん脚本のCLOCKUP作品ということで、性的な描写に関しても質・量ともに極めて充実していることがプレイ前からもうわかりきっていました。実際、期待を遥かに超える重厚なシナリオに充実のエロシーンが楽しめるゲームなのでまだプレイしていない読者は買ってプレイするべきです。
 まず第一に、本作はシナリオの構成が素晴らしいです。基本的な構造は少しずつ主人公の選択が違う複数のルートをプレイしていくうちにどんどん事の真相が明らかになっていくというありふれたノベルゲームの体裁なのですが、情報の漸次的な出し方が非常に巧みです。真実に近づくためのキーワードはどんどん出てきて少しずつ全体像がつかめた気分になるのに、どこか違和感が拭い去れないままプレイを進めていくと最終的には予想もつかない人物関係の背景や真相が明らかにされます。物語の真相については、まあちょっと無理があるんじゃないかなとも思いましたが、人間という存在の愚かさというか、執念・執着心の強さを考えると納得できるものでした。主人公が完全に高潔な人物ではないということが、この物語を物語として成立させている感じです。(ここから少しネタバレ)ただし、いくらなんでも後半は稀世良が空気すぎないかなとは感じました。それと稀世良ルートにいくつかあった伏線のようなものが回収されていない気がします。主人公が妙に稀世良ちゃんに本能的な魅力を感じているような描写がある理由とか、あの偽太歳は何だったのかとか。最後の方は半分くらい寝ながらプレイしてたから何か見逃したのかもしれないけれど。(ネタバレここまで)
 エロシーンについては、実は販売前から一つだけわかっていることがありました。公式サイトの「機能概要」の部分のスクリーンショットをご覧ください
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おわかりでしょうか。当該描写が存在しない描写のON/OFF機能は存在せず、かつ、排泄物描写のON/OFF機能は搭載されていないのである。つまり、本作には排泄物描写が存在しないということになる。(ここから本気ののネタバレ)そもそも太歳を食べた人が簡単に死ぬようなことはなさそうだし、一部の人が日常的に排泄物を食わされてるみたいなドギツい展開があってもよかったと思うんですけどね。(性癖を暴露していく)(ネタバレここまで)
 まあ私の趣味はともかく、本作はとにかく村の男たちが女たちを輪姦するというシチュエーションが多く、意に反して大人数に無理やり乱暴されるというプレイがお好きな方にとってはたまらない作品となっています。また、口淫の描写が多種多様かつ豊富で、とにかくシーンがあれば誰かしらが丁寧にしゃぶっているという有様なのでそっちのシーンが好きな方にも強くお勧めできます。特に、最初の数ルートでの十子への容赦のない攻めは圧巻なので、公式HPのイラストなどを見てピンと来る方はぜひプレイしてみるとよいでしょう。ただし、エロシーンになると急にキャラクターの語彙力がエロ方面で急上昇するのはちょっと違和感があって、「電話」と聞いてもピンとこないような文化レベルの人たちがいかにも現代のエロゲという感じのワードを連発するのはちょっとだけ興が削がれるかもしれません。とはいえ昔の語彙で喘がれても困る(たぶん声優さんも困る)ので仕方がないことかもしれません。
 その他グラフィックに関してですが、全体を通して「モノクロ+赤」を基本とした色彩的に印象の強いシーンが多くあり、美術的な何かを感じます。パッケージや最初に稀世良に合うシーンなど、頭がおかしくなりそうなくらい真っ赤な絵面が多く、本作と「赤」の関りを否応なく感じさせます。詳しい人ならここからいろいろと結論を出せるのかもしれませんが、私自身美術に関する知識が極めて乏しいうえに不必要なネタバレにもなりうるのでこれ以上の言及は避けます。
 声優さんの演技に関しては、本作は完全に非の打ち所がありません。あまり声優さんを評価するための語彙を持っていないのですが、一言でいうとエロシーンの迫力がすごかった。ヒロインの2人(?)は言うまでもなく、意外と少し薹が立った(婉曲)ご婦人方のエロシーンが非常に良かったです。
 最後にまとめの一言。Erewhonはテーマや世界観が必ずしも広いタイプのエロゲではありませんが、その分人間の感情を極めて深く掘り下げて描写した素晴らしいゲームでした。色々と万人向けとは言いかねますが、この感想に影響を受けて買ってくれる人が一人くらい現れたらよいなと思います。
 最後の最後にここまでの感想を全て台無しにする私のツイートを紹介致します。


最後まで読んでくださってありがとうございました。

*1:念のため補足します。『euphoria』は企画担当ということで全ルートに関わっておられるとは思いますが、一部他の方の脚本された部分もあります。また、前述の通り『サクラノ詩』は真琴ルートを担当されました。