自分支援機構

10年後には黒歴史

電気通信主任技術者(伝送交換)を受けてきた話(その1)

 こんにちは。支援機構です。最近は大学から帰ってきてはひたすらアニメを見て精神の安定に努めています。先日、電気通信主任技術者伝送交換主任技術者の方(分類については後述)を受けてきたので簡単に記事にしておきたいと思います。自己採点によると不合格なので、合格体験記のような立派なものではなくて単なる日記であることをご了承ください。一応、受かった科目の参考書類のレビュー(そんな大層なものではないが)は参考になると思います。

著者のスペック及び受験のきっかけ

 この記事の著者は普段は物理をやっています。この資格試験では一応少しだけ計算問題も出てくるのですが、それで一度も困ったことがない程度(そもそも極めて簡単な計算しか出ないです)には計算が得意な人間が書いた記事だということを最初にご了承ください。そういう人間が電気通信主任技術者試験を見ると99.9%暗記のみの試験に感じるので、この記事は感じた印象そのままに書いています。悪しからず。
 こんな受験料の高い試験をわざわざ受けるのは、ちょっと就職が怖くなってきたからです。多少就職する分野がズレてても難しい資格を並べておけば箔が付くだろうという浅はかな考えで受験しました(そして落ちた)。それと、毎日のようにPCやらスマートフォンで死ぬほどインターネットを利用しているオタクとしては、そういった通信の詳細を知っておくことも悪くないだろうという知識欲のような理由もあります。

電気通信主任技術者とは

 時間がなくて法規の勉強を放棄していたので詳しいことは言えませんが、
電気通信国家試験センターのHPにある表現を引用させていただきますと、

 電気通信事業者は、その事業用電気通信設備を、総務省令で定める技術基準に適合するよう、自主的に維持するために、電気通信主任技術者を選任し、電気通信設備の工事、維持及び運用の監督にあたらなければなりません。電気通信主任技術者の選任は、原則として、事業用電気通信設備を直接に管理する事業場ごととなります。

ということだそうです。私の解釈でいうと、弱電(情報の授受)の分野で設備の工事などの監督ができる(人として選任されうる)資格です。
 電気通信主任技術者には

の二種類の区分があり、私が今回受験したのは前者の伝送交換主任技術者の方です。

試験の概要

 電気通信主任技術者の試験は、伝送交換主任技術者も線路主任技術者も4科目あります。

  1. 電気通信システム
  2. A設備及びA管理(A=伝送交換 or 線路)
  3. 専門的能力
  4. 法規

 電気通信システムは法規以外の科目の基礎となるような科目で、他の科目の簡単な部分を拾ってきたような問題と、電磁気学や回路の易しい計算問題が出ます。
 A設備及びA設備管理では、設備や設備管理の概要に加えて、セキュリティや後述の専門的能力の内容をざっと漁るような問題が出ます。
 専門的能力は、伝送交換主任技術者では

  • 伝送
  • 交換
  • データ通信
  • 無線
  • 通信電力

の5科目から、線路主任技術者では

  • 通信線路
  • 通信土木
  • 水底線路

の3科目から1科目を選んで回答することになります。
 法規は、法規です。正直それ以上言うことはないです。
 受験料は18700円(高い)で、年に2回、1月と7月試験があります(2018年現在)。科目合格の制度や、他の国家試験との相互科目免除システムなどがありますが、細かいことはやはり電気通信国家試験センターのHPを見てください。

行った勉強と参考書類

 節の題名に「行った勉強」などと大仰なことを書いてしまいましたが、この資格の勉強で必要なのは大量の暗記ただそれだけです。基本的に、文章を読んで正誤を判定する以上に困難な作業がほとんどない資格と言えます。一応理系の難しい資格扱いされているようなのですが全くそういう雰囲気はありません。
 時系列順に振り返りましょう。そもそもこの試験を申し込んだのは4月のことだったのですが、当時は勉強できる気満々でした。大学院生の忙しさを正直ナメてかかってました。唯一の選択科目である「専門的能力」も、せっかくだし受験者が少なそうなやつを選ぶかと思って「通信電力」を選びました。今思うともっと参考書に恵まれた科目を選ぶべきだった。
 結局今回は勉強に本格的に取り掛かれるようになったのが6月下旬ということもあってまともに取り掛かれたのは「電気通信システム」(以後「システム」)と「伝送交換設備及び設備管理」(以後「設備」)の2科目だけでした。どちらの科目も、オーム社から出ている問題集を中心に勉強しました。
電気通信主任技術者試験 これなら受かる 電気通信システム 改訂2版』
電気通信主任技術者試験 これなら受かる 伝送交換設備及び設備管理 改訂2版』

これらのテキストは、過去6年分の試験問題を分野別に分類して詳しい解説を加えたもので、問題集としての特徴と過去問題集としての特徴を併せ持っています。重複を除いて本当に6年分きっちり載っているので、この二冊を購入する場合は無理に過去問集を購入する必要はないと思います(逆もまた然り)。「システム」についてはともかく、「設備」については験範囲が無駄に広くてそのほとんどが知識事項を各個に学ぶことになるので体系的な勉強がほとんど役に立ちません。そのうえ過去に出てきた問題が(多少手を変えて)繰り返し出てくるため、勉強法としては実質「過去問をひたすら解いては対応する知識を暗記していく」というものが最も効率的になると思われます。「電気通信について体系的にきっちり学ぼう!」という気分で挑むのは、よほど記憶力に優れて時間がある人以外おすすめできません。
 とはいえ、問題を解いていて気になることがあったり、断片的な知識を最低限の体系・章立てのもと整理したいということもあると思います。実際私も「設備」については参考書を購入しました。
電気通信主任技術者 試験対策・伝送交換設備及び設備管理』この参考書を出版している日本理工出版会という出版社はたくさん電気通信主任技術者のテキストを出版していて、そのうち多くが「古い」「問題傾向に即していない」など評判が悪いです。しかしながら、この本に関しては出版も新しく(2014年)カバーや前書きからも試験対策に力を入れたという雰囲気が読み取れるので、人身御供のつもりで買ってみました。確かに、演習問題が(ほぼ)存在しなかったり、試験の傾向や対策にあまり触れていないなど資格のテキストとしては少し不満な点はありましたが、「設備」の広大な範囲を手際よくまとめて一冊の参考書に仕立て上げているという点でとても優れた参考書でした。すべてを熟読したわけではありませんが、問題を解いていて気になることはたいてい載っていましたし、記述に古さも感じませんでした。問題が載っていないのでこれ単体で勉強するのはちょっと厳しいかもですが、持っておくと便利だと思います。
 以上のように、まず「システム」と「設備」の勉強をしていたのですが、研究がいろいろとアレで死ぬほど忙しかったこともあり、ほとんど残りの科目が勉強できていない状態で試験前日の土曜日になってしまいました。残りの「通信電力」と「法規」については手付かずです。この段階で(遅い)、まともに受ける科目は「システム」と「設備」に絞ることにしました。一応かすかな望みにかけるため、午前だけは「通信電力」と「法規」を勉強しました。
 通信電力に関しては、ほぼ唯一の参考書である
電気通信主任技術者 通信電力テキスト』
電気通信主任技術者 通信電力テキスト

電気通信主任技術者 通信電力テキスト

  • 発売日: 2007/09/01
  • メディア: 単行本
を読みました。正直、このテキストを手放しに褒めるのは難しくて、記述は古いし問題の解説は足りていないし最近の傾向に一切対応していないし、試験対策にはイマイチでした。単純に通信電力技術の勉強にはなるんですけどね。通信電力のテキストはこの本か、専門的能力5科目抱き合わせの高い参考書しかないので、受験者の悩みの種でしょう。どうしたらいいんでしょうね。
 法規に関しては、電気通信協会から出ている『電気通信主任技術者法規試験対策』という参考書を買ってはいましたが、正直ほとんど読みませんでした。
 最後に過去問についてちょっと言及します。この試験の過去問は公式サイトで数回分公開されており、また過去の分も有志のサイトで無料配布されています。したがって、市販の過去問集の意義としては、問題そのものの情報を得ることや出題傾向の把握ではなく解答についての解説を得ることになります。過去問集は、日本理工出版会からシステム・設備・法規が一緒くたになったものと、専門的能力が5科目載ったものがそれぞれ売っています。私については、今回の受験では市販されている過去問&解説集は購入しませんでした。というのも今回本腰を入れて勉強したシステムと設備に関してはオーム社の問題集が結局過去問集だからです。この記事を読んでいる受験者も、よほど金銭的余裕があるのでなければどちらか片方を買うだけで充分だと思います。法規に関しても上記の参考書に大量に過去問が載っているので次回以後の受験では過去問集は買わない予定です。専門的能力(通信電力)の過去問についてはまあ今後の私の懐事情次第ということで。
 とにかく前日に一夜漬けで「設備」の知識を暗記して、運よく寝落ちもせず当日の朝を迎えました。

試験当日

 試験当日についてはあまり言うことはないですが、この記事を読んでいる受験者のためにいくつか情報を残しておきます。
 2018年現在、試験会場に持っていくべきものは受験票、鉛筆、シャープペンシル、プラスチック消しゴム、アナログ式の時計です。ええそうです。なぜか時計はアナログ指定です。たいていの教室には壁掛け時計があると思いますし、そもそも時間が余って仕方ないタイプの試験なので忘れても全然大丈夫だと思いますが……
 あと時間について。この試験はよっぽど日本語を読むのが遅い人でもない限り絶対に時間が大量に余るのですが、2018年7月の試験では途中退出は試験開始から1時間経過後から可能でした。午前は速攻で退出して午後の試験に備えるのがよいでしょう。試験時間は結構ややこしくて、午前・午後にそれぞれ2科目をまとめて受験するのですが、科目合格などにより受験するのが1科目だけの人は途中(80分とか100分とか)で退出することになります。1科目だとマジで40分もかからないので気にすることはないと思いますが。

結果

 7/11日に解答が発表されたので早速自己採点をしてみました。結果はこんな感じ。

  • 電気通信システム:80/100
  • 伝送交換設備及び設備管理:62/100
  • 通信電力:48/100
  • 法規:32/100

勉強時間を確保できた2科目についてはなんとか合格していました(採点ミス等なければ)。特に「設備」はギリギリなので本当に危なかったです(今回は明らかに簡単な回だったのにこの体たらくである)。とにかく半分はやっつけたので受験料も完全に無駄にはならなかったと信じています。

最後に

 とにかくこの試験は暗記が多くてつらかった。応用情報の午前みたいな面倒さがありました。通信関係の用語についていろいろと詳しくなれたのでその点ではかなり面白かったです。せっかく2科目受かったのでこの効果が持続する間に合格してしまいたいですが、今年度の冬の受験はやめておくかもしれません(あれ、でもそうすると来年度の就活で書けないぞ)。果たして(その2)の記事を書くのはいつになるのでしょうか。通信電力はともかく法規だけはやる気が出ないなあ…………
 長い記事をわざわざ読んでくださってありがとうございました。こんな記事を読む人は電気通信主任技術者に興味がある方がほとんどだと思いますが、かなり面倒(≠難しい)な資格なので心してかかってください。